フレグランスと私

リレーインタビュー<メイリリィ>

リレーインタビュー<メイリリィ>

- 癒しと教育をテーマに「香楽=こうがく」を広めていらっしゃる山下さんですが、日常でご愛用しているフレグランスはありますか?

山下さん:その日の天気や行く場所、気分や洋服によって香りを考えるのが私の楽しみなので、何か一つに絞らず様々です。今日は息子である山下武尊(やました たける)が手がける「GARMENT(ガーメント)」を、洋服に合わせ、マゼンタとフリルの組み合わせでつけています。今の季節には、マゼンタをまとって、足元にファーを重ねるのも好きですね。

- 組み合わせて使えるという「GARMENT」の誕生について一言お願いできますか?

山下さん:私独自の香り創りのメソッド「香楽」に幼い頃から触れていた彼は、香りはイメージだと捉えていました。そんな彼がロンドンでジュエリーと洋服を学んで帰国した際、洋服は毎日同じものを選ばないし、季節によて素材も色も変化するのに、香水にはなぜそういう概念がないの?と聞かれたんです。それで、洋服のようにコーディネートできるような香りがあれば面白いなと思ったのがきっかけでした。

- 香りを重ねるときは、どのようにつけているのでしょうか?

山下さん:私はウエスト周りと、ウエストから上、の二箇所に分けて香りをつけます。二つの香りを重ねる時は、鼻元から遠いウエストラインより下に重ねます。そうすることで、柔らかく香りが広がるんです。

- 一日のうち、どんなタイミングでフレグランスをつけていますか?

山下さん:朝と出勤前につけて、事務所では午後に香りを付け足します。気分転換や身のまわりで状況が変わる時に香りがあると、心強い存在にもなり得ます。

リレーインタビュー<メイリリィ>

- “香水を手軽に取り入れることが難しい”と感じる方が多いのも現状ですが、そのような方にはどのように香りに触れて欲しいと考えていますか。

山下さん:「ジュース飲みたいな」ぐらいの軽い気持ちで、香水を特別なものだと思わないでライフスタイルの中で自然に取り入れて欲しいと思います。入り方はどうであれ、香りをつけることに慣れて行くと、「楽しい」に変化すると思うんです。考えていることを意識するより、構えないで「これが好きだな」という感情に素直に反応できるといいと思います。

- 山下さんの香りのアカデミーに来られる方は、既に香りに触れている方が多いのでしょうか?

山下さん:すでに香りに関して肯定的で、香りがある生活が当たり前になっている方が、もっと香りに触れたいからといらっしゃる場合が多いです。「香りが好き」というだけで最初は知識としては何も無くても、授業の中で“自分はこうだ”と表現できるようになっていきます。

- 山下さん自身が香りの世界に飛び込んだきっかけをお話しいただけますか?

山下さん:若い時は香りや香水に触れていた訳ではありませんでした。病気になったり、精神的にも人生で一番辛かった時期に、香りを作るということに出会いました。そこで学んだことが沢山あり、もっと身近なところに香りがあれば、心を豊かにしてくれるんじゃないかと思ったことがきっかけでした。香りの存在は、ずっと私の中にあった「~ねばならない」から解放してくれて、心を豊かにしてくれました。もう一回頑張れると思ったんです。そこが人生の大きな転換期でした。
香りを学びにフランスに留学したのが43歳。何かをスタートする時に年齢や出発地点なんて関係無いということは、土の下からスタートしたような私が伝えていくべきメッセージだと感じています。

- 近頃注目している素材や香調があれば教えてください。

山下さん:2000年頃から似ている香りが多く出回るようになりましたが、クラシカルな香調は私にとっては特別美しいと感じるものです。現代では古めかしいと感じるかもしれませんが、いつかは時代がまわって、クラシカルな香水が注目されたらいいなとずっと思っています。それもあってガーメントも少しクラシカルなベースを使っています。
流行り廃りは、情報などに左右されたり、誰かの意見が指針になることもあると思います。日本は特に右に倣えという風潮がありますが、香りを生活に取り入れつつ「個性」を活かして、“自分はこれが好き”と言えるようになるといいですね。

リレーインタビュー<メイリリィ>

ガーメント

4色のベースフレグランス 「シアン」「マゼンタ」「ブルー」「ホワイト」に、4つのフィルター「 ファー」「フリル」「リネン」「デニム」を重ねることでオリジナルな香りの着こなしを提案。

Profile

山下 文江 (やました ふみえ)
有限会社メイリリィ 代表取締役社長 フレグランスデザイナー

調香・アロマテラピーを広く学んだ後、フランス グラースの調香専門学校 ASFO GRASSE へ留学。帰国後、フレグランスデザイナーとして活動をはじめ、企業・個人からの依頼でオリジナルの香りを制作。癒し(フレグランスセラピー)と教育(フレグランスアート)をテーマにした、独自の香り創りメソッド「香楽KOUGAKU」を構築し、誰にでも楽しめる香り創りによって、嗅覚を使った情操教育を実践。一般社団法人香楽メソッド普及協会を設立し、普及に努める。