フレグランスフォーラム

2015年

muguetCIMG0213-5疎林の中、低く幅広い葉の茂みから密やかに小さな白い鈴ようの花を並べてつける可憐な植物・鈴蘭は、君影草というロマンチックな名前も持つ。英語でLily of the valley、フランス語でmuguet(ミュゲ)。欧州、小アジア、西アジアに自生するのはドイツスズラン(Convallaria majalis L.)で、東アジア、日本の森に咲くスズラン(C. keiskei Miq.)とは種類が異なる。

両種の香りの質は良く似ているが、ドイツスズランのほうがやや強く匂う。フランスでは、春を告げ、幸せを呼ぶ花として、5月1日にスズランの花束を大切な人に贈る習慣がある。昔、フランスのブローニュの森で採取したスズランの花から液化ブタンガス抽出で花精油製造が試みられたが、花の摘み取りが厄介な上、抽出品はスズランの清楚な香りを再現していなかった。20世紀初頭にはスズランようの匂いを持つ合成香料・ハイドロキシシトロネラールが合成され、その後も開発が続く合成香料を主原料として天然のスズランの香りをよく再現したベース香料が各香料会社で開発され、フレッシュなフローラル調の香料調製に大きく貢献している。

 

解説

にほひすと&かおりすと 吉原 正明