フレグランスフォーラム

2013年

ヒノキ2ヒノキ(英名:Japanese Cypress、学名:Chamaecyparis obtuse Sieb. et Zucc.)は 本州(福島県以南)、四国、九州、屋久島、台湾に分布する常緑針葉高木で、狂いが少なく、加工しやすく、水にも強く、芳香を放つため、用途は建築材、家具・建具材、舟材、浴槽材、俎板など、多岐にわたる。
社寺などの高級な木造建築には、ヒノキがよく用いられる。木の肌目が細かくて、特有の光沢があって美しい上、フレッシュでカンファー(樟脳)様の清々しさとおだやかなウッディ調のヒノキ特有の芳香は爽快で、多くの日本人を魅了する。伐採後1,000年位経っているものでも、削ると芳香を発するという。写真の黄色い粒は風雨に曝した古いヒノキ材から浸み出したヤニ(樹脂)で、ヒノキの香りを放つ。
幹材や根株のチップを水蒸気蒸留して得られるヒノキ精油は、戦前、浮遊選鉱用の気泡剤やテレピン油代りに用いられたが、今は石鹸や入浴剤用香料として用いられる。葉からは水蒸気蒸留でヒノキ葉精油が得られる。ヒノキ精油よりも軽く、グリーンでフレッシュな香りを持つ。
ヒノキチオールを含有するのは、台湾に自生する亜種・タイワンヒノキや、別種・タイワンベニヒで、抗菌作用が強く、精油含量も高いため、耐久性にすぐれるが、乱伐で資源が枯渇し、伐採が禁じられている。
法隆寺や薬師寺の塔、正倉院、伊勢神宮などの社寺建築に用いられるなど、古来、我が国の木造建築文化を支えてきたヒノキは、今、スギに次ぐ広い造林面積をもっている。この由緒ある豊かな芳香資源を活用した日本の香り、日本のファインフレグランス製品の世界への発信が待たれる。

 

解説

にほひすと&かおりすと 吉原 正明