フレグランスフォーラム

2014年

乳香2o_11701-1英語でオリバナム(Olibanum)あるいはフランキンセンス(Flankincense)、フランス語でアンサン(Encens)という。

乳の滴りを想わせる透明感のある乳白から橙色の芳香樹脂で、かんらん科ボスウェリア属植物・乳香樹の樹皮に傷をつけて採取する。
利用の歴史は紀元前古代エジプトに溯り、神聖な薫香、霊薬として用いられ、紀元前10世紀ごろには、アラビア半島南部から西部を経て地中海岸へと繋がる交易ルート“乳香の道”(2000年に世界遺産登録)ができ、繁栄したが、キリスト教からイスラム教世界に代わるとともに廃れていった。今もキリスト教、ユダヤ教の儀式や祭りに焚かれる。イエーメン、オマーン、ベドウインの人たちは来客接待時に香を焚き、集いのあとに香炉で衣服に乳香を焚きしめる習慣がある。中東から東アフリカに生育するBoswellia carterii Birdw. の樹脂が最も一般的で、オマーン、イエーメン、ソマリアに生育するBoswellia sacra Flueck.からの樹脂が最上質。乳香の溶剤抽出品、水蒸気蒸留品はイスラム世界最高級香水の主原料として用いられるほか、オリエンタル調、シトラス調のフレグランス製品用に用いられる。

 

解説

にほひすと&かおりすと 吉原 正明