結果発表 第9回 日本フレグランス大賞

フレグランスフォーラム

香料を知る

2019年

ウッド(OUD、またはAgarwood)木の香りは古(いにしえ)より高貴な香りとして薫(たき)もので使用されてきました。その中でも香木として最も価値のある沈香(じんこう)は、仏教のみならずイスラム教などの宗教儀式においても珍重され、人々の心を癒すとともに天界に誘う薫香として愛されてきました。

 

原木はアキラリア・アガローチャ(Aquilaria agallocha)というジンチョウゲ科の樹木ですが、木部がダメージを受けると、特殊な菌の作用で樹脂を内部に形成し、その部分がその素晴らしい香りを醸し出すのです。しかし、原木が沈香に変化するまでには長時間を要するため、グレードの高いものは今や大変希少になり、ワシントン条約で輸出入は規制されています。

 

現在でもベトナムやラオス近郊で採取されますが、最高グレードの伽羅(きゃら)は金より高額です。その香りは重厚で気高く残香に優れ、まさに極楽浄土を想起させるといわれます。今、この香りを香水に用いてみようとするパフューマーがドバイを中心にOudのブームを起こしています。

 

Gucci (Intense Oud), Creed(Royal-Oud),Versace(Oud Noir), Yves Saint Laurent (Splendid Wood)等、男性用は勿論、女性用のフレグランスとしてもその濃厚な香りが、中東のみならず欧米でも流行ってきました。原料は全て天然とはいかないのですが、原木を栽培し釘を打って樹脂の生成を促す方法で製造されるものも現れるようになりました。

 

 

山本香料株式会社

代表取締役社長

山本芳邦(薬学博士)

2015年

ラヴェンダー2IMG_0526-1ラべンダーと一口にいっても多くの種類があり、雑種も栽培品種も多い。香料用に供される種類は主としてトゥルーラベンダーとスパイクラベンダー、そしてこれらの雑種のラバンディンである。トゥルーラベンダー(学名:Lavandula  officinalis  P. Mill. )は、南仏プロヴァンス地方の海抜600から1,500mの丘陵地帯が原産の、7月から8月にかけて、特有の芳香を放つ青紫色の小さな花を穂状に付ける、しそ科の草に見えて草ではない木本の植物。南仏のほか、ブルガリア、ウクライナ、タスマニア島などで香料用、ポプリ用に栽培されている。

属名のLavandula はラテン語のlavo(洗う)が語源。
南仏で洗濯物への香り付けに用いていたことに由来する。

 

ラベンダー精油と合成香料のクマリンを主原料とする香料を使った香水石鹸が好評で、同じ「Fougere Royale」という名前で発売した同じ香調(香りのタイプ)の香水もまた人気を博し、似た香りのフレグランス製品が次々と生まれた。これらの香調はフゼア(Fougere)調と呼ばれ、男性化粧品用の香りのトレンドセッターとなった。精油はラベンダーの花茎を水蒸気蒸留して得るが、溶剤抽出で保留性の高い花精油(absolute)も得られる。

 

解説

にほひすと&かおりすと

吉原 正明

2016年

ローズドメイダマスクローズと並んで、香料製造用に栽培されているバラに、ローズ ド メ(rose de mai、フランス語で五月のバラの意)というピンク色の多弁のバラがある。

花びらが多いことから、センチフォリアローズ(学名Rosa centifolia L.)(百枚も花びらがあるバラの意味)と呼ばれ、また、花びらがキャベツのように重なっていることから、英語ではキャベッジローズと呼ばれる。

ダマスクローズと、白色で多弁の大きな花を咲かせるアルバローズとの交雑種と考えられている。南仏、モロッコで栽培される。 南仏では、花が大きく、精油含有量も多い品種・double種も栽培されている。これらの花を溶剤抽出して、花精油・ローズ ド メ アブソリュート(rose de mai absolute)が得られる。花から芳香成分を溶剤抽出して得られる香り高い凝固品のことを花精油(アブソリュート・absolute)と呼ぶが、ローズ ド メ アブソリュートは、ジャスミン アブソリュートとともに、歴代フレグランスの創作に必ずといっていいほど用いられる代表的な花精油である。しっとりした、バラらしい芳醇な香りで、他の花精油や精油とよく調和する。中国産のローズ・玫瑰(学名Rosa maikai Hara)や、ハマナス(学名Rosa rugosa Thumb.)からも花精油(absolute)が得られ、フレグランス製品用に用いられる。

 

解説

にほひすと&かおりすと

吉原 正明

 

2015年

muguetCIMG0213-5疎林の中、低く幅広い葉の茂みから密やかに小さな白い鈴ようの花を並べてつける可憐な植物・鈴蘭は、君影草というロマンチックな名前も持つ。英語でLily of the valley、フランス語でmuguet(ミュゲ)。欧州、小アジア、西アジアに自生するのはドイツスズラン(Convallaria majalis L.)で、東アジア、日本の森に咲くスズラン(C. keiskei Miq.)とは種類が異なる。

両種の香りの質は良く似ているが、ドイツスズランのほうがやや強く匂う。フランスでは、春を告げ、幸せを呼ぶ花として、5月1日にスズランの花束を大切な人に贈る習慣がある。昔、フランスのブローニュの森で採取したスズランの花から液化ブタンガス抽出で花精油製造が試みられたが、花の摘み取りが厄介な上、抽出品はスズランの清楚な香りを再現していなかった。20世紀初頭にはスズランようの匂いを持つ合成香料・ハイドロキシシトロネラールが合成され、その後も開発が続く合成香料を主原料として天然のスズランの香りをよく再現したベース香料が各香料会社で開発され、フレッシュなフローラル調の香料調製に大きく貢献している。

 

解説

にほひすと&かおりすと 吉原 正明

2015年

basilIMG_0484-3熱帯から亜熱帯に生育するしそ科メボウキ属の香り高いインド原産の1年草。花と葉を水蒸気蒸留して精油を得るが、世界各地で種間相互交配が進み、複雑化して純粋品種の保存が難しく、植物学的には、同じOcimum basilicum L. でありながら、化学的に精油成分組成が大きく異なるいくつかのタイプにわかれる。

一つはリナロールが主成分のリナロールタイプで、フランス、北米で主に栽培され、イタリア料理にバジリコの名でよく用いられる。精油はsweet basil oil と称し、フレッシュ、グリーンでスイート、スパイシーな香りで、“Eau Sauvage”など高級フレグランス製品用のほか、食品香料に用いられる。アフリカ東南部諸島産のエキゾチック或いはレユニオンタイプと呼ばれるバジルはメチルチャビコールが主成分で、トイレタリー製品用などに利用される。

他に、スウィート、フルーティな桂皮酸メチルタイプなどがある。バジルは古来、アジア、欧州で料理、薬、宗教儀式に汎用され、水で膨潤した種子のゼリーで目の異物を取り除いたことから目箒(めぼうき)という。バジルのように同種でもタイプにより含有成分も生理学的作用機序も異なる場合、アロマテラピーでは、ケモタイプ(主成分名)として区別している。

 

 

解説

にほひすと&かおりすと

吉原 正明

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