フレグランスフォーラム

香料を知る

2013年

DSCF1956ローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)はシソ科の常緑低木で、地中海から黒海沿岸、中東、東アフリカに自生し、抗菌、抗酸化、消臭、血行促進、炎症抑制、消化不良改善などの作用があり、早くから食生活、医療に利用され、形状、花の色も多様で交雑種が多い。

水抽出物は消臭効果が高く、ロズマリン酸、カルノシン酸などの存在が消臭、薬効に係わっている。欧米では、ローズマリーの葉は冷蔵庫が発明されていない頃から、塩漬けの魚肉の嬌臭(臭みをとること)に使われてきた。今では、香草として他のハーブとともに魚肉料理の味の引き立てに汎用されている。Rosemary absoluteは香り以外の効能は不明。
精油は水蒸気蒸留で得られ、葉、花から採油するチュニジア産出の精油は品質が高い。スペイン産出精油の品質は最高級品から小枝もいっしょに採油する低級品まで幅が広い。品種、採油部分の違いによって精油成分も異なる。香りは新鮮で、ハーバル、森林を想わせるウッディで、嘗て、著名な香料専門誌がアンケートした時、世界の調香師の大半が、ハーブ調といえばローズマリーの精油の匂いを連想すると答えている。
精油はアルコール性フレグランス製品の元祖のハンガリー・ウォーター(Hungary water)や主に現代の男性用フレグランス、オーデコロン、オーフレッシュの香り作りや、食用ソース作りによく利用される。

 

解説

にほひすと&かおりすと  吉原 正明

2013年

ミツバチ類の働きバチは、天候がよく採蜜できる花の量が多いと、蜂蜜の貯蔵庫が満杯になるため、体内に蜜を貯めるが、貯まり過ぎると、その一部が体内で蜂蝋(ビーズワックス・bee’s wax)に変換され、腹の裏面の蝋腺から分泌したビーズワックスを口に入れてリボン状にして、六角形の貯蔵庫・蜂の巣(ハニカム、honeycomb)を共同作業で増築していく。
ビーズワックス5年以上経ったハニカムには、蜂蜜や花粉の匂いが染み込んでいる。
欧州、アフリカ、中近東の一部に棲息し、養蜂に広く利用されているセイヨウミツバチ(Apis mellifera L.)の巣を取り出してスライスし、温めて溶かし、ろ過して蜂蜜を垂らしとり、さらに巣を遠心分離して蜂蜜を採った後、巣を水洗し、鍋に流し込んで冷やして固めて、蜜ロウ(蜜蝋)を作る。これを直接エタノールで洗い出し、エタノールを溜去して、bee’s wax absuluteという動物性香料を得る。採蜜した花の種類の違いでabsoluteの香気は異なるが、グラースの天然香料メーカーはグラース近辺のクローバーから採蜜するミツバチが作るbee’s wax(仏語はcire d’abeille)から、マイルドで甘く、花粉様の、干し草的、蜂蜜的な、亜麻仁油を想わせる香気を発する固形状のbee’s wax absoluteを製造する。合成香料主体の調合香料を丸く、ふくよかにする(round off)のに有効である。

 

解説

にほひすと&かおりすと 吉原正明

2013年

foram-02-1地中海沿岸の自然の恵みとして、柑橘類の中で

オレンジに次ぐ重要な果実を生むレモン

 

Citrus limon (L.)Burmann)は、実はヒマラヤ山脈東部山麓が原生地で、インダス文明で利用され、語源はヒンドゥ語。メソポタミア文明で栽培が拡がり、ユダヤ人が地中海沿岸に広め、欧州アレキサンダー大王がペルシャからギリシャへ持ち帰り、十字軍遠征で欧州全体にもたらされた。

アメリカ大陸へは15世紀末、コロンブスが2回目の渡航時、船員の壊血病対策に運んでから拡がった。

 

 

シチリア島、スペイン、カリフォルニア、アルゼンチン、ブラジルなどで大規模栽培され、
精油も生産されている。

 

foram-02-2果皮を圧搾して収率0.2から0.3%でレモン ピール オイル(レモン精油)を得る。昔は手とスポンジで搾油していたが、今は機械搾油が主流である。

 

フレッシュ、スウィートな匂いであるため、香粧品用香料のフレッシュな上立ちとして、またオーデコロン類の香りのボディノートとして、さらには、清涼飲料用に無くてはならない天然香料の一つである。Rive GaucheやDrakkar Noirなど、多くのフレグランス製品で爽やかさを演出している。

レモンの小枝、葉を水蒸気蒸留して得る精油はプチグレンシトロニエ 油と呼ばれ、匂いがグリーン、ビター、フレッシュでパワーがあり、男性化粧品用香料に多用される。

 

解説

にほひすと&かおりすと 吉原正明