フレグランスフォーラム

香料を知る

2015年

basilIMG_0484-3熱帯から亜熱帯に生育するしそ科メボウキ属の香り高いインド原産の1年草。花と葉を水蒸気蒸留して精油を得るが、世界各地で種間相互交配が進み、複雑化して純粋品種の保存が難しく、植物学的には、同じOcimum basilicum L. でありながら、化学的に精油成分組成が大きく異なるいくつかのタイプにわかれる。

一つはリナロールが主成分のリナロールタイプで、フランス、北米で主に栽培され、イタリア料理にバジリコの名でよく用いられる。精油はsweet basil oil と称し、フレッシュ、グリーンでスイート、スパイシーな香りで、“Eau Sauvage”など高級フレグランス製品用のほか、食品香料に用いられる。アフリカ東南部諸島産のエキゾチック或いはレユニオンタイプと呼ばれるバジルはメチルチャビコールが主成分で、トイレタリー製品用などに利用される。

他に、スウィート、フルーティな桂皮酸メチルタイプなどがある。バジルは古来、アジア、欧州で料理、薬、宗教儀式に汎用され、水で膨潤した種子のゼリーで目の異物を取り除いたことから目箒(めぼうき)という。バジルのように同種でもタイプにより含有成分も生理学的作用機序も異なる場合、アロマテラピーでは、ケモタイプ(主成分名)として区別している。

 

 

解説

にほひすと&かおりすと

吉原 正明

2014年

イランイラン1東南アジア諸島原産の、現地の言葉で「花の中の花」と呼ばれる香りのよい花をつける常緑喬木・イランイランノキ(学名Cananga odorata Safford)がある。

花から芳香を取り出すため、フランスは当時植民地であったアフリカ東南海上のコモロ諸島、ノシベ島、レユニオン島でプランテーションを行った。今、現地では花を傷めないよう注意深く水蒸気蒸留して、イランイラン オイル(ylang ylang oil)を生産している。初めに溜出する軽い上質の香りのextra グレードから、最後に溜出する重い香りのthirdグレードまで4区分され、フレグランス製品用には、アルコールへの溶解度が高いextraグレード品が用いられ、アルページュ(ランバン)などのフローラルブーケ調フレグランスの重要な原料となる。

インドネシアでも、イランイランの花からカナンガオイル(cananga oil)が生産される。花を蒸留釜に詰め込み、直火で水蒸留し、グレード区分もしないため香りは華やかさに欠けるが、男性化粧品用や石鹸用香料調製に利用される。コモロでは溶剤抽出も行われ、花精油はイランイラン アブソリュート(ylang ylang absolute)と呼ばれ、ミュゲ調の高級フレグランス製品用香料に用いられる。

 

解説

にほひすと&かおりすと 吉原 正明

2014年

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インド原産のモクセイ科ソケイ属のジャスミン(素馨)

(学名Jasminum grandiflorum L.)の花から溶剤抽出で花精油・ジャスミン アブソリュート(Jasmin absolute)が得られる。

 

南仏では、花(fleurs)といえばジャスミンを指すほど親しみ深い植物である。花精油はローズのそれと並んで高級フレグランス製品用の香り作りには欠かせない。

 

南仏・グラース産の花からのものが最上品質であるが、花も労働力も豊富なエジプト、インド、モロッコなどのジャスミン栽培に適したところが主産地となっている。清楚可憐な白い花は夏の夜から朝にかけて、芳香が質、量ともに最良になるため、7月から8月の朝摘みの花からの抽出品が尊ばれる。

摘花後も1日以上香りを発するジャスミンの花を毎日取り替え、香気を牛脂と豚脂の混合物に十分に吸いこませた後、エタノールで香料を洗い出すアンフルラージュ法は、花から高収率で独特の甘い香料が得られるため、よく用いられたが、手間がかかる上、狂牛病問題もあって21世紀初頭に生産が中止された。同じソケイ属で、南アジアでは宗教行事でふりまかれたり、ジャスミン茶製造に用いられるマツリカ(茉莉花)(学名Jasminum sambac (L.) Ait.)からも、花精油・ジャスミンサンバック アブソリュート(Jasmin sambac absolute)が採られ、最近のフレグランスにしばしば用いられている。

 

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吉原 正明

2014年

ダマスクローズバラは、バビロン、古代エジプト、ペルシャの庭園ですでに栽培され、その美しい姿と香りが楽しまれていたという。

香料用に栽培されるバラに芳香のバラを交配して作り出されたダマスクローズ(学名Rosa damascena Mill.)がある。

現在、ブルガリア、トルコが主産地で、インド生まれでペルシャ育ちのこのバラは、シリアのダマスカス(Damascus)を経由してトルコ、バルカン半島に拡がったことから、ダマスクローズと呼ばれる。

花を水蒸気蒸留あるいは水蒸留して精油・ローズオイル(rose oil)を得る。実際には、最初に得た精油(direct oil)と、下層に溜まった芳香水(first water)を少し濃縮して浮かせた芳香油(water oil)を混合してローズ オイルとする。
精油はオットーローズ(otto(attar) of rose)とも呼ばれるが、アラビア語のフレグランスに当る言葉に由来する。溶剤抽出した花精油・ローズ ブルガリアン アブソリュート(rose Burgarian absolute)も生産されている。精油の香りは軽くて強く、ややスパイシーなピリッとしたさわやかさがある。花精油の香りは花香に近く、しっとりとしてフローラルである。ともに高級フレグランス製品用に、また、精油は飲食品用にも利用される。蒸留は、医薬、飲食品の風味付け、祭礼などに使われるローズ水(Rose water)などを得るために発達した。

 

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にほひすと&かおりすと 吉原 正明

2014年

ビターオレンジ1東南アジア原産のビターオレンジ(だいだい)(学名Citrus aurantium amara L.)は今、世界中の温帯から熱帯に広く生育しており、地中海沿岸や西インド諸島などで香料用に栽培され、果実、花、葉から各種の天然香料が作られる。

スペイン、ギニアでは、果実を圧搾して果皮中の精油分を採り出したビターオレンジ オイル(orange bitter oil)は食品香料への需要が多い。南仏、イタリア、チュニジアなどで花を水蒸留して採るネロリ(オイル)(neroli(oil))は、フローラルで柑橘のさわやかな香りで、クラシックなオーデコロンや男性用フレグランスなどの香り作りに重宝される。

中世イタリアのNerola公国の王妃がこよなく愛した事から、オレンジフラワー オイルをネロリと呼ぶようになった。花を溶剤抽出すると、オレンジフラワー アブソリュート(orange flower absolute)が得られ、少量でフレグランス製品の香りを芳醇にし、ネロリとの併用はさらに効果を増す。
摘花後の葉や小枝を水蒸気蒸留して得られるプチグレン オイル(petitgrain bigaradier oil)は、安価で力強い香気を持ち、ネロリの代わりに化粧品、トイレタリー製品などに広く利用される。ネロリの副産物・ネロリ水(Neroli water)は、昔、鎮静剤として多用された。

 

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にほひすと&かおりすと 吉原 正明