フレグランスフォーラム

2014年

じゃ香2IMG_0820-1動物性香料の代表で、英語でmuskという。

ヒマラヤの南から中国奥地、北はシベリアのバイカル湖あたりまで分布する数種のジャコウジカ(Moschus属)のオスの臍と生殖器の間にある香嚢(Musk Pods)に溜まる麝香腺分泌物。繁殖期に強い匂いを発散させてメスを誘引する。チベットから中国にかけて棲息するジャコウジカからのものが良質で、トンキン地方(ハノイを中心とするベトナム北部一帯)から輸出される麝香はTonkin Muskと呼ばれ、最高級とされてきた。乾燥して得られる黒い粒状物(musk grain)を薬用(興奮、強心などの薬理作用が強い)に供するほか、エタノールでチンキにして香料原料とし、高級フレグランス製品の香りを引き立たせ、持続させる。

昔はジャコウジカを殺し、切り取った香嚢を乾燥させたものが高値で取引されたが、血液凝固物などの混ぜ物もあった。1979年以後、絶滅危惧種としてワシントン条約で捕獲が禁止され、中国では飼育ジャコウジカの香嚢から1回に数十グラムの麝香を掻き出す方法がとられている。

合成のムスク香料が19世紀末から開発され、今では多種類が香水から日用品にいたるまで広範囲に用いられ、香りを生き生きさせ、持続させるのに役立っている。

 

解説

にほひすと&かおりすと 吉原 正明