フレグランスフォーラム

2014年

アンバーグリスマッコウクジラ(抹香鯨)(学名 Physeter macrocephalus L.)の消化器内にできる不定形の蝋状の塊(結石)をアンバーグリス(ambregris)という。これを砕いてエタノールに浸漬し、数年間熟成させて作るアンバーグリス チンキ(ambregris tincture)や、それを濃縮して作るアンバーグリス レジノイド(ambergris resinoid)を動物性原料香料とし、高級フレグランス製品作りに用いる。

甘い、独特の芳香を発する。古典的なフレグランス、とくにオリエンタル調、シープル調には欠かせない原料香料で、少量で全体の香りを引き立たせ、長持ちさせる効果がある。異国の海岸で採れ、燃やすと良い香りがする塊であるとの共通点があったことから、欧州では、松脂の化石である琥珀(amber、ambre)と混同され、鯨の病的分泌塊は通常灰色であるため、これを灰色の琥珀(フランス語でambre +gris(灰色))と呼んだ。

昔はインド洋沿岸に漂着したもの、海上に浮遊するものを入手したが、商業捕鯨が禁止されるまでは、マッコウクジラ体内から取り出すことが多かった。中東地域では早くから強壮薬、媚薬、飲料などに用いられ、欧州でも嗜好飲料や菓子に用いられ、中国では龍涎香と呼び、香薬として重宝された。最近は、上質の合成香料が代替利用されている。

 

解説

にほひすと&かおりすと 吉原 正明